横山教頭日記

     
                                      前田 昌伸

これは、今は亡き横山昌計教頭とのエピソードを綴ったものです。

私が政治の世界を志すことになったのは、横山教頭の影響に因るところ

があります。



     ○月×日横山教頭がやって来た。

 羽曳野市立西浦東小学校に、横山教頭がやって来た。

ぱっと見は冴えないサラリーマン風だが、眼鏡の奥の目は鋭い。

「この教頭、出来る・・・のか?」

 月に一度のPTA役員会の後、僕と斉藤会長と北前会長3人で近所の

居酒屋で一杯飲むのが恒例になっていた。

今日も行こうかと話していると、横山教頭が一緒に行きたいという。

その日から横山教頭は固定メンバーとなった。話の内容は、

嫁との馴れ初めから学校内の問題までよく酒を飲みよく話した。

そして、今まではPTA役員としてただ任期を務めればよいと思っていた

のが、積極的に学校のことを考えるようになっていったのは、

この横山教頭のおかげである。

良かったのか悪かったのか。

   


     ○月×日手作り遊具作り

 学校の先生たちの要請でPTAが校庭に遊具を作る計画があった。

斉藤会長の保育園の事務所で何回も集まって計画を練った。

いつも飲みながら話をするので、話がどんどん大きくなっていった。

又、北さんは現職の大工で、僕は土木の技術者なので

技術的には問題ない。

材料はどうしようかと話していた時、斉藤会長の身内から工事で伐採した

材木があると言ってきた。

丸太は、まだ皮がついていたので、皮むきから始まった。

櫓に組むのは北さんの仕事だ。

丸太を切ったり、磨いたり多くの先生や保護者の人に手伝ってもらって

遊具は完成した。

 後日、西浦東小学校でPTAが遊具を作ったと他の学校のPTAが

自分のところでもしようと見に来たが、

「こんな遊具とてもじゃないけどよう作らん。」と帰って行った。

横山教頭が、陰に日向に活躍して完成した。

横山教頭の遺産である。



     ○月×日おやじの会

 PTA副会長だった僕は、翌年会長になった。

そして、昨年の遊具造りの時にたくさんの保護者に手伝っていただいた様に、

PTA活動の活性化には、父親が出てきてほしいと、おやじの会を作った。

初代委員長には、斉藤前会長にしていただき、

十数名のお父さんが来てくれた。

 とりあえず、飲みに行こかと、もちろん横山教頭も一緒に行った。

初対面の人も多かったが、大いに盛り上がった。

宴たけなわ、日付もとっくに変わってしまったその時、事件が起こった。

深ちゃんが斉藤委員長の顔にオシボリを投げ付けたのだ。

斉藤委員長が、怒ってテーブルを思い切り叩いた。

すると、テーブルの上の料理や酒や、ワイングラスが飛び散った。

グラスは割れ、みんな赤ワインをかぶって、シャツが赤く染まる。

店中騒然となった。初回からこれか?

おやじの会前途多難。



     ○月×日夏祭り

 おやじの会として、夏祭りをしようということになった。

今考えると横山教頭の発案だったと思う。

 最初は、大した事を考えていなかったのだが、

横山教頭と酒を飲んでいると、どんどん話が大きくなっていく。

出店の数も増えていく。河内音頭をやろう。

保育園の子供たちに演奏をしてもらおう。

幼稚園の先生にも太鼓をたたいてもらおう。

小学生も出そう。どんどん規模が大きくなっていった。

その夏祭りは、今では、地域すべてを巻き込んだ西浦東校区の夏祭り

として、今でも続いている。

横山教頭の遺産である。



     ○月×日運動会

 何時もの様に横山教頭と酒を飲んでいると運動会の話になる。

僕「しかし小学校の運動会は面白ないな。リレーや騎馬戦も無いし。」

横山教頭(以下「横」)「すんまへん、内容については先生たちが仕切って

いて教頭はあまり口出し出来ひんのですわ。」

僕「それに、昼食を子供達は教室に入って食べるから、

親は家に帰ってしまうやろ。

そしたら昼からガラガラになって子供らもダラダラしてるやん。

昔は、親子で昼ごはん食べて楽しかったけどな。

これって教育委員会が別々にするように指導してるの?」

横「いや、そういう規定も指導もありません。」

僕「それやったら、西浦東小学校でも親子昼食出来るの?」

横「学校としてそう決めたら出来ます。羽曳野市内では無いけど、

大阪府下でもやっているところがあります。」

僕「ほな、西浦東小学校で親子昼食やろ。」

横「なかなか難しいところがあるけどやりましょう。」

とりあえず親子昼食に賛成か反対かアンケートを取ろうとしたが、

ここで先生たちの反発にあった。

運動会は、先生たちが仕切っている学校行事

なのにPTAがアンケートを取るのはおかしい、反対だという。

しかし、なんとかアンケートを取ることを許してもらった。

アンケートの結果は、賛成8割、このままで良い(反対)2割だった。

反対の理由は親が来れない人がかわいそうだからというのだが、

自分の処は運動会に行くと答えているのだから、反対はないに等しい。

このアンケートの結果を見ても先生たちは反対の大合唱である。

そのうち、「アンケートの集計がおかしいのと違うの。」と言い出す始末。

こうなってはまともな議論ができない。

最終的には、丸野校長と横山教頭二人が、

親子昼食をやりますと押し切った。

今では、羽曳野市内の他の小学校も親子昼食を実施している。

これも横山教頭の遺産である。



     ○月×日餅つき大会

 又何時ものように横山教頭と酒を飲んでいると。

横「最近、餅つきする家がなくなってきてるなー。そや、小学校でやろ。」

皆「そや、ええな、やろやろ。」

皆酒に酔っているから簡単に考えて賛成してしまう。

そして、例の如く酒を飲むたび話がどんどん大きくなっていく。

大道芸を呼ぼう。そや、やんちゃっこ祭りも一緒にしてしまおう。

餅つきがお祭りになっていく。

その餅つきは今でも西浦東小学校で続いている。

横山教頭の遺産である。



     ○月×日スキーに行った

 PTAの役員、おやじの会のメンバー、横山教頭、校務員の松浦さんと

スキーに行った。

行先は今庄365スキー場。

夕方出発し、スキー場の施設で仮眠をとり早朝から滑る予定である。

 マイクロバスで行った。

マイクロバスは大型免許が必要だが、大型免許を持っているのは僕だけ

なので、必然的に僕が運転をする。交代の運転手はいない。

当然のように車内にはビールや酒がいっぱい詰まったクーラーボックスが

積んである。全員集まって出発したとたん。

阪口「さあ、とりあえずビール飲もか。」

横「あかん。前田はん運転でビール飲まれへんのに私らも飲んだら

あかん。」

僕「いや、ええで、気にせんと飲んでや。」

横「そうでっか、それやったら飲ましてもらいます。」

 (なんと切り返しの早い・・・。)

出発してわずか数分でバスの中はどんちゃん騒ぎの宴会となった。

向こうに着いたら温泉に入

って寝るだけなので、安心して飲める。

横「次はワインいこか―。おーこれはうまい、前田はん残念やなー

このワイン飲まれへんで。」

慰められているのか苛められているのか。



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